私がヴァン・ヘイレンの存在を知ったのは80年代。
その頃は「ベストヒットUSA」などの音楽番組が乱立し、日本は洋楽ブームの真っ只中。
その影響でマイケル・ジャクソン、マドンナ、プリンス、ワム、デュラン・デュラン、カルチャー・クラブなど、音楽番組で常に紹介されてる人気アーティストばかり聴いていた。
中学時代のお小遣い月3000円は、大体その洋楽アーティストのレコード代として消えた。
それでポップでノリの良い「Jump」を気に入り、今でも名盤とされるアルバム『1984』を購入。
しかし、シンセを使ったお目当てのノリの良い曲は「Jump」のみ。
あとはギターがやかましい曲ばかり!
「うわっ、失敗した!」と思ったが、一か月はそれを聴いて我慢するしかない。
そんな感じで気が進まないながらも日々レコードを流していた。
そんなある日、ふとこんな変化が。
「もしかして、このギターってカッコいいんじゃね?」と。
そこからヴァン・ヘイレンに徐々にのめり込み、「Panama」を弾きたくてギターも始める事になる。

先ずは1984年のビルボードのヒットチャートにランクインしたもので、今でも有名そうな曲をいくつか挙げてみる。
Paul McCartney & Michael Jackson / Say Say Say
Kenny Loggins / Footloose
Ray Parker Jr. / Ghostbusters
Culture Club / Karma Chameleon
Cyndi Lauper / Girls Just Want To Have Fun
Duran Duran / The Reflex
Prince & The Revolution / Let’s Go Crazy
Stevie Wonder / I JUst Called to Say I Love You
Nena / 99 LuftBallons
など。
音楽番組は主にチャートの上位(ベスト10など)しか紹介しないので、ハード・ロック系が出てくる事は殆どない。
チャートの上位ではないが、ZZトップ、クワイエット・ライオット、ナイトレンジャーなどが100位以内に入っていた。
そんな中、ヴァン・ヘイレンの「Jump」は一位まで登り詰めた。
これはとてつもない快挙ではなかろうか。
因みにアルバム『1984』の最高位は二位。
タイミング悪く、同時期に発売された「世界で一番売れたアルバム」マイケル・ジャクソンの『スリラー』が、数か月間王座に君臨し続けたからだ。
収録されてる曲の殆どがシングルカットされたモンスターアルバムの牙城は崩せなかった、という訳。
たまに「ヴァン・ヘイレンをトップアーティストに導いたのはサミー・ヘイガーの功績」と言う人もいるが、それは少し違うと思う。
サミー加入でより万人受けしやすい曲調に音楽性が変化し、幅広い層を獲得出来たのは確かだろう。
しかし上記のようにサミー加入前に十分な土台が出来ていたのは間違いない。
「天下統一したのは信長ではなく秀吉だ!」という論争に近い。
簡単に『1984』の収録曲の説明を。
① 1984
「Jump」の序章として作られた(?)ような、スペーシーなシンセの独奏による小曲。
エディ・ヴァン・ヘイレンはギターのサウンドでも革命を起こしたけど、このシンセのサウンドもかなりギラギラしている。
当時最先端の楽器だったシンセの魅力を最大限に引き出している。
② Jump
誰もが一度は耳にした事があるであろう、シンセによるキャッチーなイントロ。
リフメイカーとしての才能は、このシンセの曲でも遺憾なく発揮されている。
当時の雑誌でボーカルのデイヴ・リー・ロスは「ジサ〇しそうな人がいる現場に遭遇し、歌詞のインスピレーションを得た」と語っている。
ポップなメロディから突然マイナーに転調。
そして颯爽と駆け抜けるギターソロとそれに続くシンセソロ。
実はこのシンセソロ、ドラムのアレックス・ヴァン・ヘイレンの懐の深い表現力の見せ場でもある。
どうしてもシンセに耳が行きがちだけど、機会があれば是非ドラムにも耳を傾けてほしい。
奇しくも同じ年にR&Bのコーラスユニット “ポインター・シスターズ” も「Jump」という曲でチャート入りしている。
③ Panama
「シンセのJump」から一転、今度はポップだがハードで荒々しいギターサウンドによる「Panama」。
「ザ・アメリカン」という感じの、こちらもシングルヒットを狙った曲。
ギターソロはどことなく1stに収録されてる「You Really Got Me」を思わせる。
そしてギターソロの後のエンジン音はランボルギーニを使用!
ギターで疑似的に音を作り出すつもりだったが、エンジン音のリアルさ、インパクトを優先させたようだ。
④ Top Jimmy
軽快なロックンロール。
イントロはエディの得意技のタッピングハーモニクスだが、かなり歪みを抑えている。
それでも綺麗に鳴らしているところが凄い。
このギターソロはエディの1stからの癖がよく出ていてる。
「Eruption」でも聴く事が出来るが、速いフレーズの前に「スタッカート気味に3音弾く」のが特徴の一つ。
これ、あまり気付いてる人は少ないんですよね。
どこかのレヴューでけしからん事に「捨て曲」扱いされていた。
⑤ Drop Dead Legs
ゆったりとしたブルージーな曲。
この頃の雑誌のインタビューでアラン・ホールズワースは「エディのプレイは好きだけど、最近僕に似てない?」と漏らしている。
後半のソロは、そのホールズワースのトレードマークである「ストレッチを駆使したハンマリング&プリング」のオンパレード。
エディもその頃「僕を夢中にさせてくれるギタリストはホールズワースしかいない」と語ってるので、本当に好きだったんですね。
⑥ Hot For Teacher
アップテンポのハードシャッフル。
ハーレーのエンジン音のようなドラムで始まり、エディのワイドストレッチ使用のライトハンドフレーズ。
ハードロックファンにはたまらない、インパクト大のイントロですよね。
せっかくカッコイイ曲なのに、MVではデイヴの後ろでエディ、アレックス、マイクの三人がダサいダンスを踊る。
⑦ I’ll Wait
アルバムでのシンセ使用の3曲目はマイナー曲。
「Jump」ではバッキングでも多少ギターが入るが、こちらはギターソロのみ。
ドラムが所々でいいスパイスを加えている。
⑧ Girl Gone Bad
スピード感のあるハードナンバー。
もしかしたらヴァン・ヘイレンの曲の中でも一番ハードな曲かも。
ドラムも聴き応えアリ。
この曲のギターソロもホールズワース臭が漂います。
⑨ House Of Pain
コアなファンに人気の曲。
ゆったりとしたハードなギターのイントロに、拍の掴みづらいAメロ。
テンポが若干速くなり、ヴァン・ヘイレンとしては少し長めなギターソロ。
人気の洋楽を幅広く聴いてる一般の人には受け入れられないでしょう。
ハードな曲を聴きたい人は⑧⑨がオススメ。
という事で、ヴァン・ヘイレンの『1984』と当時の流行った曲などを紹介させていただきました。
次回もヴァン・ヘイレンのアルバムについて語っていきたいと思いますので、ご期待ください!